歯科衛生士は、口の中の健康をチェックしてアドバイスやケアを行う仕事です。
歯科診療に欠かせない存在として歯科医師のもとで活躍し、訪問歯科診療や福祉施設に勤務するケースもみられます。歯科衛生士は歯科クリニックを中心に一定の需要がある職業ですが、給与や年収が気になるという方もいるのではないでしょうか。
ここでは、歯科衛生士の平均年収や年収を上げる方法について紹介します。年収アップにつながる資格もピックアップしていますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.歯科衛生士が年収1,000万円を稼ぐのは可能?
2.歯科衛生士の平均年収
3.歯科衛生士の職場ごとの年収
4.歯科衛生士が年収を上げる方法
5.歯科衛生士の年収アップにつながる資格
6.歯科衛生士の年収を上げるためのコツを知ろう
歯科衛生士が年収1,000万円を稼ぐのは可能?
日本歯科衛生士会が行った「歯科衛生士の勤務実態調査」では、常勤の歯科衛生士で「900万円以上 1,000万円未満」の年収を得ている人は全体の0.1%でした。(※)
歯科衛生士が年収1,000万円を稼ぐことについては、不可能ではありませんが、ほとんどの方が1,000万円に満たない水準であり、一部の限られたケースのみが実現できる金額です。
しかし、歯科衛生士全体の年収は過去と比較して増加していると考えられます。同調査では、歯科診療所の勤務者で年収400万円未満の方について、第8回の調査では85%ほどだったのに対し、第9回は80%を下回っていました。
20%以上の歯科衛生士が年収400万円以上に達していることを踏まえると、1,000万円に満たなくても年収は増えていると考えられます。
年齢や熟練度に応じて昇給するシステムを採用している職場の場合、出産や介護で退職せざるを得ないケースがあると、年齢を重ねてスキルをもっていても昇給が難しくなってしまいます。
年齢に応じた昇給システムは、同じ職場に長く勤めることが重視されるため、キャリアが途絶えないように工夫が必要です。
長く勤務して年収アップを目指す場合は、離職しないための取り組みを行っている職場を選びたいところです。
※参照元:公益社団法人日本歯科衛生士会「歯科衛生士の勤務実態調査報告書」
歯科衛生士の平均年収
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」では、歯科衛生士の給与は男性で27万9,700円、女性は28万1,000円でした。(※1)
男女をあわせた月収は28万1,000円で、そこに賞与や残業代が含まれます。厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」で公開されている情報では、歯科衛生士(平均年齢37.8歳)の平均年収は404.3万円となっています。(※2)
さらに国税庁が発表した「令和4年分 民間給与実態統計調査」によれば、日本人の平均給与は458万円でした。男女別にみると、給与所得者数は男性が2,927万人で女性は2,151万人、平均給与は男性が563万円(13.7万円増加)となり、女性は314万円(11.9万円の増加)でした。(※3)
男性のほうが女性よりも人数・平均給与ともに多くなりましたが、女性だけを見ると歯科衛生士の年収は日本人女性の年収よりやや上回っています。
一方、男性や他業種を含めた平均年収は458万円で、歯科衛生士の年収は日本人全体の平均年収に達していない状況です。
※1参照元:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」
※2参照元:厚生労働省職業情報提供サイトjobtag「歯科衛生士」
※3参照元:国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」
歯科衛生士の職場ごとの年収
歯科衛生士の平均給与は職場によって変わります。歯科医院・診療所、病院・大学病院、民間企業の3種類の年収目安をみていきましょう。
歯科医院・診療所
歯科医院・診療所は一般的な歯科衛生士の職場です。全国に数多く点在し、大学病院や民間企業よりも就職・転職口が広い特徴があります。
歯科医院・診療所の給与の目安は、賃金構造基本統計調査で判明した月収が目安になります。
厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」によれば、歯科衛生士(平均年齢37.8歳)の平均給与は404.3万円となっていますが、求人のなかには月収約28万円以下のケースもみられるため、年収にすると300万円〜400万円が相場といえるでしょう。
病院・大学病院
病院・大学病院は中規模以上の総合病院や大学病院などを指します。複数の診療科が併設されており、専門性が高い病院です。
求人数は一般の診療所や歯科医院より少ないものの、病院勤務になると専門的な知識や経験が求められることもあり、熟練者ほど年収が高くなる可能性があります。
一般の歯科医院では年収300万円〜400万円程度が相場ですが、大病院に勤務することで一般歯科診療を超えた処置に携われるチャンスがあり、結果として年収が上がっていくことがあります。
患者数が安定的に確保できる大病院は経営状態も安定し、十分な賞与や昇給が期待できるでしょう。
民間企業
医療法人などの企業で働く歯科衛生士は、一般の診療所よりも給与が高い傾向にあります。メーカーや養成学校など、企業に勤務する場合は専門性や経験が重視されます。
営業業務や医院のコンサルティングのように、歯科衛生士の三大業務とは異なる業務に従事している方もいます。また、熟練した知識と経験をもつ方はセミナー講師として活躍することもあります。
民間企業の求人は診療所や歯科医院ほど多くはありませんが、多業種にまたがって募集がかけられるため、普段とは違った経験ができるチャンスです。
企業ごとに業績や業務内容も異なるため、年収は職場によって変わります。歯科医院や診療所の28万円を超える30万円以上の求人なら、賞与とあわせて年収アップが期待できるでしょう。
時給にして2,000円前後の求人もありますが、未経験者か経験者かによって給与水準が変わるため、求人の内容をよく確認してください。
歯科衛生士が年収を上げる方法
歯科衛生士が年収を上げる方法は次の5点です。
- 対応できる業務を増やす
- 資格を取得する
- 給与の高い地域で働く
- 大手歯科医院に転職する
- 独立開業する
資格や対応力といったスキルアップに加えて、給与の高い環境を選んだり独立したりといった道を選ぶ方法もあります。それぞれのポイントをみていきましょう。
対応できる業務を増やす
歯科衛生士は国家資格であり、資格を活かしてキャリアを重ねていける職業です。しかし、一般歯科診療だけを担当し続けても業務の幅は広がりません。
勤務環境にもよりますが、一般的な業務にとどまらないように発生しないように、対応できる業務を増やすことが大切です。
外科治療や自費診療、その他の検査や往診(訪問歯科診療)と、対応できる業務を増やしてスキルアップに取り組みましょう。
対応できることが増えるほど、就職や転職の際に有利にはたらきます。同年代の歯科衛生士との差別化、面接時のアピールにもつながります。知識や経験を意欲的に吸収し、対応能力を上げていきましょう。
資格を取得する
資格取得は、歯科衛生士としてのスキルアップとキャリアアップ、さらには年収アップに役立つ方法です。
歯科衛生士になってから取得できる資格には、学会認定の資格が挙げられます。
- 日本歯周病学会認定歯科衛生士
- 日本小児歯科学会認定歯科衛生士
- 日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士
- 日本歯科保存学会認定歯科衛生士(う蝕予防管理)
- 日本障害者歯科学会認定歯科衛生士
※上記は一例です。
各学会が認定制度を設けており、学会に所属して講演会や研修会に参加し、検定試験などを受けることで、専門性を高めることができます。
勤務している病院や企業で取得が推奨される場合もあります。業務に役立つ資格から優先的に取り組んでみてはいかがでしょうか。
関連記事「歯科衛生士が取れる資格|スキルアップや転職に役立つ?」
給与の高い地域で働く
給与水準の高い地域で働くことも、年収アップが期待できる方法といえるでしょう。
東京都や大阪府のような大都市圏、またはその周辺地域では、歯科を利用する人口が確保しやすく、給与水準の高い歯科医院や病院を見つけられる可能性があります。
中都市や小都市と呼ばれる地方都市でも、利便性の高いエリアや人気のエリアでは安定した求人が見つけられるでしょう。
厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」では、歯科衛生士のしごと内容や類似する職業、賃金(年収)に関する統計データを公開しています。
一例として、東京都の平均年収は473.8万円(平均年齢41歳)で、全国平均である404.3万円よりも70万円程度高くなっています。反対に、高知県は315.2万円(平均年齢46.5歳)と低水準でした。
高知県のように平均年齢が高い地域では、少子高齢化にともなって歯科衛生士不足が深刻化するおそれもあります。そのため、人手不足を解消するために賃金アップが期待できる可能性があります。
大手歯科医院に転職する
歯科医院として知名度が高い病院やクリニックを探し、転職する方法も給与アップにつながりやすい方法です。
ただし、大手歯科医院の求人募集は専門性の高い医療を提供するといった目的から、経験者を優先・優遇することがあります。未経験者は一般的な診療所の給与と変わらず、経験に応じて昇給するシステムを採用しているケースもあります。
求めるスキルに満たない場合、すぐに昇給や年収アップとはならない可能性があります。募集要項をよく確認し、資格や経歴が活かせる職場を選んで転職活動を進めてみてください。
独立開業する
歯科衛生士は国家資格のため、一度取得すればその資格を活かして働けます。特定の歯科医院や病院に勤務し続ける決まりはなく、独立開業によって個人事業主となり、フリーの歯科衛生士として活動することもできます。
個人事業主になるためには相応の専門知識や技術力、セミナー講演やコラムを執筆できるような経験があると理想的です。また、他の歯科衛生士との差別化や営業力があれば、独立して働ける可能性があります。
歯科衛生士の年収アップにつながる資格
歯科衛生士が年収アップを目指すときは、資格の取得が効果的です。資格を得るための勉強や実務が、そのままキャリアアップに役立つためです。
- 認定歯科衛生士
- 認定矯正歯科衛生士
- インプラント専門歯科衛生士
- ホワイトニングコーディネーター
ここからは、年収アップを目指すために取得したい4つの資格についてみていきましょう。
認定歯科衛生士
認定歯科衛生士は、日本歯科衛生士会が認定する資格です。
生活習慣病予防や在宅療養市道・口腔機能管理といった認定研修を順に受講し、コースを修了すると認定が行われます。6つの認定分野からコースを選んで受講できるので、高い専門性と知識・技術の習得がアピールできる資格です。
日本歯科衛生士会が主催する傷害研修制度を修了した歯科衛生士、または専門学会等から推薦された歯科衛生士が審査に合格すると、認定証が交付されます。
認定を受けてから5年ごとに更新が必要になるため、条件を確認し申請書を作成・送付して結果を確認し、5年に1度認定証の更新を受けます。
※参照元:公益社団法人日本歯科衛生士会「認定歯科衛生士について」
認定矯正歯科衛生士
認定矯正歯科衛生士は、日本成人矯正歯科学会が主催・認定する資格です。
矯正歯科での実務経験や歯科臨床で矯正を扱っている方を対象に、矯正治療経験を認定しています。経験年数に応じて2級と1級に分けられ、2級は経歴や実績を証明する書類を提出し審査が行われます。
2級を取得してから5年の実務経験を減ると、1級の取得が可能になります。1級は日本成人矯正歯科学会での学術発表と口頭試問が行われます。
矯正歯科の実務経験に特化した知識と技術を認定するため、1級を得るためには5年の経験が必要です。2級・1級ともに矯正歯科や矯正の専門クリニックに勤務する際に重宝される資格です。
※参照元:特定非営利活動法人日本成人矯正歯科学会「認定矯正歯科衛生士2級」
インプラント専門歯科衛生士
インプラント専門歯科衛生士は、日本口腔インプラント学会が認定する資格です。正会員として2年以上が経過し、インプラント治療の介助やメンテナンスに携わった経験をもつ歯科衛生士を認定します。
申請には正会員であること、3年以上インプラント治療のメンテナンスや治療介助を行ってきたこと、学会の学術大会・支部学術大会への参加といった条件が設けられています。
条件を満たしたうえで申請し、インプラント専門歯科衛生士試験に合格すると日本口腔インプラント学会から認定が受けられます。
※参照元:公益社団法人日本口腔インプラント学会「インプラント専門歯科衛生士」
ホワイトニングコーディネーター
ホワイトニングコーディネーターは、日本歯科審美学会が認定する資格です。
自費診療であるホワイトニング治療は審美性が重視される治療です。ホワイトニング治療を受ける方の多くは見た目の自然さや美しさを求めることから、施術方法だけではなく「歯の美しさ」に関しても専門的な知識がなくてはなりません。
日本歯科審美学会へ入会し、認定講習会を受講してから認定試験を受け、合格すると認定が受けられます。
一般歯科診療に審美歯科を併設しているクリニック、美容歯科に勤務する際に重宝される資格のため、転職を考えるうえで保有しておきたい資格です。
※参照元:一般社団法人日本歯科審美学会「ホワイトニングコーディネーター」
歯科衛生士の年収を上げるためのコツを知ろう
今回は、歯科衛生士の平均年収や年収を上げるための方法、取得したい資格について紹介しました。
年収を大幅に上げるのは難しいものですが、資格の取得や勤務地・勤務先を選んで転職するといった工夫で、年収を上げていくことができます。勤務場所が昇給システムを採用していれば、長く働くほど年収アップが期待できるでしょう。
民間企業への転職や独立のような選択肢も選べますが、すぐに実現できなければ、将来の目標としてスキルアップやキャリアアップを目指してみてはいかがでしょうか。
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監修者
長谷 麻央
株式会社ハーモニック キャリアアドバイザー
《略歴》
タレントマネージャーとして5年の経験を積んだ後、
看護師専門人材紹介コーディネーターとして13 年間務める。
2021年から現在にかけて、ハーモニックでキャリアアドバイザーとして多くの求職者に貢献中。